1リットルの涙

2006年4月27日
昨年ドラマ化された「1リットルの涙」。
このドラマにはモデルとなった少女が実在しています。
木藤亜也さん。
彼女は脊髄小脳変性症という病と戦い、21歳で短い命を終えました。
その彼女が体の異変を感じた15歳の頃から亡くなる直前、ペンを動かす
力がなくなる時まで書き綴った日記が文庫本で出版されています。
『1リットルの涙 難病と戦い続ける少女亜也の日記』

彼女の病気は、彼女から歩くこと、物を書くこと、喋ること…
健康な人間が普通にやっていることを順々に奪っていきました。

昨年、この本を購入したのですが、読み始めて数頁で涙が溢れてしまい、
公共の場だったので読むのをやめてしまってそのままになっていたのですが
また読み出しました。
人前ではもう決して読めないなと思います。

彼女の日記を読んでいるとどうしても昔の自分を思い出してしまうのです。
私が異変を感じたのは、まだ中学2年生、13歳の夏でした。
町医者を点々とし、最後に辿り着いたのは往復3時間かかる大学付属病院でした。
そこで明らかにされた病名は聞いたこともなければ、どんな漢字書くの?と
いうくらいの怪奇な病名でした。
でも、自分の体はどうなっちゃってるんだろう、どうなるんだろうと
不安だった日々を思えば、ちゃんと病名が付いてる病気なんだってわかって
安心する自分がいました。
ただ、次に医者から言われたのはこれといった有効な治療法はないということ
でした。
でも「きっと治るから、頑張ろう」そう医者が言ってくれた時、病気になって
から初めて涙がこぼれました。

しかし、大学病院というところはとても居心地が悪かった。
彼女も日記の中で大学病院での出来事を書いている。
教授診察というのがあり、そこで最終的に診断が下されるわけだが、
その診察室には、教授を中央にそして患者を取り囲むように教授の下につく
医者たち(卵もいるのだろうか)が総勢30名くらいが立ち並んでいて、
わたしはまるでモルモット。
遠慮のない視線が突き刺さる。
13歳といえども恥じらいある乙女なのに、そこで上半身の服を脱がされて
3,4人の医者から触診された。
あちこちで、あぁだこうだと話す声が聞こえる。
ただ、わたしは言われるがまま、見られるがまま、触られるがまま…。

身体を蝕まれた私の取り得は勉強しかなかった。
例え、身体がこのままでも生きていけるように、自尊心を失わない為には
学業で頑張るしかなかった。
恋愛もして、キラキラ輝いていてもいい時に、わたしは、恋愛も人並みに
生きていくことも諦めていた。
諦めて、だからその分、いい成績を取ることで生きている意味や価値を
そこに見出していた。
勉強が好きだったわけじゃない、ただ、わたしに残された道はそれしか
なかったから。

あの時は、将来、普通に就職することすら困難だろうと思っていた。
恋愛して、結婚なんてもってのほか、そんなことを期待してはいけないと。
それまで健康に生きていた分、当たり前にできていたこと、当たり前のように
あると思っていた未来が奪われた苦しみ、喪失感は、きっと経験した人にしか
わからないでしょう。
亜也さんの日記を読んでいるとそれが痛いほど伝わってきます。

わたしは、幸いなことに彼女のように命を失う病気ではありませんでした。
しかも、わたしが抱えた病は当時に比べればだいぶよくなってきています。
病気になることで経験できたこと、見えたこと、感じられたことは大切な
財産と言えるでしょう。
でも、当時の私にはそんな風に考えられる余裕はありませんでした。
彼女が日記に書いているようにわたしは思えない部分がありました。
こんな病気になったのは母親のせいだとも思っていたのです。
そう思っていた私はずっと病気から逃げていたのです。
病気を与えられた試練だとは思わず、ただ人のせいにして逃げることで
弱い自分を守っていたのです。
をんな私には彼女の日記はまぶしくもあります。
彼女は健気で、情にあふれた素直な少女です。
わたしにはそれがありませんでした。
だから、彼女の日記を読んでいると、自分を恥ずかしく思う時もあります。
そして羨ましくもあるのです。
彼女は多くの人に支えらて、家族からの大きな愛に包まれていました。
わたしも、多くの友人から支えられていた。
感謝してもしきれないくらい。
でも、家族とはどうだっただろう・・・。
家族はわたしの為に、いろいろしてくれた。
感謝している。
でも、何かが足りないと思った。
今でもその溝は消えない。

彼女の日記はわたしにとっていろいろ意味で苦いものです。
それでも、彼女の日記を読み進めたいと思います。
そのことで、過去を自分自身を見つめなおせる気がするからです。

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kai

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